独立3年目で言えるのは、「独立の敵は売上ゼロじゃなくて、固定費が見えてないこと」やったということです。
Xで「フリーランスの7割は毎月の固定費を即答できない」というポストが話題になっていましたが、正直これ、僕も独立直後はそうでした。SI営業10年やってきて法人の経費管理は散々見てきたのに、自分ごとになった途端にグダグダになる。笑えない話です。
中小企業庁のデータによると、個人事業主の廃業率は1年で約37%、3年で約88%。この数字の裏側にあるのは「稼げなかった」だけじゃなく、「自分が毎月いくら必要なのか分かってなかった」という人が相当数いると僕は思っています。
今回は、月商ゼロのときに気づいたんですけど、固定費を"見える化"しただけで不安の質がまるっきり変わった経験をもとに、独立直後の人が今日からできる5つのステップをまとめます。
なぜ独立すると固定費が見えなくなるのか
会社員時代は、手取り額から家賃と光熱費を引いて、残りで生活する。シンプルでした。でも独立した瞬間、こんな項目が一気に増えます。
- 国民健康保険料(会社負担分がなくなり、体感2倍)
- 国民年金(厚生年金からの切り替え)
- 住民税(前年所得ベースなので、独立初年度に会社員時代の税額が来る)
- 事業用の通信費・ツール代(Zoom、会計ソフト、クラウドストレージなど)
- 家事按分すべき家賃・光熱費の事業分
問題は、これらが「毎月同額」じゃないことです。国保は6月に決定通知が届くし、住民税は年4回の納付。会計ソフトは年払い。バラバラのタイミングで請求が来るから、月額ベースで把握している人が少ない。
僕の場合、独立3ヶ月目に貯金が想定の倍速で減っていることに気づいて、冷や汗をかきました。家賃の引き落とし口座の残高がギリギリになって、前職への出戻りを真剣に考えた夜もあります。原因を調べたら、「住民税の第2期」と「国保の年額」が同じ月に重なっていただけでした。把握さえしていれば、そもそもパニックにならなかった出費です。
ステップ1:生活費と事業費を「口座」で物理的に分ける
最初にやるべきは、事業用口座と生活用口座を完全に分離することです。
「そんなの当たり前でしょ」と思うかもしれませんが、僕が独立直後に相談を受けた元同僚フリーランス3人のうち、2人は同じ口座で事業も生活も回していました。これだと、「今月の売上」と「今月使っていい生活費」の区別がつかなくなります。
具体的にはこうします。
- 事業用口座:売上入金先。ここから事業経費だけ引き落とす
- 生活用口座:毎月決めた額だけ事業用口座から振り込む。これが「自分の給料」
- 納税用口座:売上の10〜15%を毎月プールしておく。住民税・国保・所得税の引き当て
3口座体制にした月から、「今使っていいお金」が一瞬でわかるようになりました。
ステップ2:年間の固定支出をExcelに全部出す
次に、年間で「確実に出ていくお金」をすべて一覧にします。僕が使っているのはシンプルなExcelシートで、縦軸に費目、横軸に12ヶ月。各セルに支払額を入れて、最下行に月別合計を出す。これだけです。
入れるべき項目は主にこの3カテゴリです。
A. 生活固定費
- 家賃(僕の場合、大阪市内のワンルーム)
- 光熱費(電気・ガス・水道)
- 通信費(スマホ・自宅回線)
- 食費の最低ライン(自炊中心で月3万円を目安に設定)
- 保険料(民間の医療保険など)
B. 税・社会保険
- 国民健康保険料(市区町村で異なる。大阪市は所得割+均等割)
- 国民年金(2026年度は月額17,510円)
- 住民税(前年所得ベース。6月・8月・10月・1月の年4回)
- 所得税(予定納税がある場合は7月・11月)
- 個人事業税(対象業種なら8月・11月)
C. 事業固定費
- 会計ソフト(freeeやマネーフォワード。月額または年額)
- クラウドツール(Zoom、Google Workspace、Notionなど)
- ドメイン・サーバー代
- 交通費の月額目安
正直この月は赤字でした、と言えるのも、この一覧があるからです。数字を隠さずに出すと、「赤字の正体」が見える。正体が見えれば、対処できる。
ステップ3:「生存ライン」と「黒字ライン」を分けて把握する
一覧ができたら、次は2つの数字を出します。
- 生存ライン:生活費+税社保の月割り額。これを下回ると貯金を食う
- 黒字ライン:生存ライン+事業固定費+貯蓄目標。これを超えると「事業として成立している」
僕の場合、独立当初の生存ラインは月25万円、黒字ラインは月38万円でした。この2つの数字を知っているだけで、営業活動の目標設定がまったく変わります。
「今月は案件がないから不安」という感情ベースの焦りが、「貯金残高÷生存ラインで、あと○ヶ月は持つ」という計算に変わる。独立の不安は、たいてい「数字がわからない不安」です。数字は嘘をつかないので、見える化するだけで精神的な安定度が段違いになります。
ステップ4:「支出カレンダー」で月別の波を潰す
年間固定費を月別に並べると、支出が集中する月が見えてきます。
僕の場合は毎年6月と8月が鬼門でした。6月は住民税の第1期+国保の年額決定通知、8月は住民税第2期+個人事業税の第1期。この2ヶ月だけ、生存ラインが通常月より5〜8万円跳ね上がる。
対策はシンプルです。納税用口座に毎月コツコツ積んでおくこと。僕は売上の15%を自動的に納税用口座に移す設定にしています。「入金されたら即15%を移す」をルール化すれば、6月や8月に慌てることはなくなります。
ステップ5:四半期ごとに見直し、note に書く
最後のステップは、3ヶ月に1回、実績と予算のズレを確認すること。
僕は毎年1月・4月・7月・10月の最初の週末に、朝ジムから帰ってきてからExcelを開いて30分で見直しています。確認するのは3つだけ。
- 実際の支出が予算を超えた費目はないか
- 新しく増えた固定費(サブスク追加など)はないか
- 来期に予想される大きな支出はないか
そしてこの結果をnoteに書く。「月次収支を公開する」のは最初めちゃくちゃ恥ずかしかったんですが、意外な効果がありました。独立3ヶ月目に出戻りを検討した話をnoteに書いたら問い合わせが3件来て、うち1件が案件につながった。失敗の言語化が次の仕事を呼ぶ、というのはこの時の体験から確信に変わりました。
「固定費が見えている」だけで独立の生存率は上がる
ここまで5ステップを紹介しましたが、やっていることは地味です。口座を分ける。Excelに書き出す。2つの数字を出す。月別の波を把握する。四半期で見直す。どれも特別なスキルは要りません。
でも、これをやっているかどうかで、独立後の意思決定の質がまるで変わります。「なんとなく不安だから安い案件でも受ける」がなくなり、「あと3ヶ月は持つから、条件の良い案件を待てる」という判断ができるようになる。
独立は感情ではなく数字で続けるもの。月商ゼロだった僕が3年続けてこられたのは、売上が爆発したからじゃなく、固定費を把握して「あと何ヶ月戦えるか」を常に計算していたからです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 会計ソフトは何を使えばいいですか?
A. 僕はfreeeを使っています。個人事業主向けのスタータープランで月額1,480円(税抜)。確定申告まで一気通貫でできるので、経理の独習コストを最小化できます。マネーフォワードクラウドも同価格帯で人気ですが、2026年5月時点でセキュリティインシデントの報道もあるため、利用する場合は公式の続報を確認してください。
Q2. 納税用口座にプールする割合は売上の何%が目安ですか?
A. 所得税+住民税+国保+事業税を合算すると、課税所得の25〜35%程度になるケースが多いです。売上ベースだと経費率によって変わりますが、僕は「売上の15%」をまず積み立てて、確定申告後に過不足を調整しています。利益率が低い業種なら10%、高い業種なら20%が目安です。
Q3. 独立直後で売上がゼロの時期はどうすればいいですか?
A. 売上ゼロでも固定費は出ていくので、「貯金÷生存ライン」で撤退期限を計算しておくことが最重要です。僕は独立時に「12ヶ月分の生存ラインを貯金で持つ」をルールにしていましたが、実際は想定外の出費で8ヶ月分くらいの感覚でした。期限が見えていると、逆に営業活動に集中できます。
Q4. 事業用と生活用の口座は同じ銀行でもいいですか?
A. 同じ銀行でも構いませんが、ネットバンキングで振替が無料かどうかは確認してください。僕は事業用を住信SBIネット銀行、生活用を地元の信用金庫にしています。事業用は振込手数料が安いネット銀行が便利です。
参考文献
- 中小企業庁「中小企業白書・小規模企業白書」 - 個人事業主の開廃業率データ
- freee「個人事業主は経費でどこまで落とせる?」 - 経費計上の基本ルール解説
- 国税庁「やさしい必要経費の知識」 - 家事按分を含む必要経費の公式解説
